シックハウス症候群
シックハウス症候群とは
住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用などにより、新築・改築後の住宅やビルにおいて、居住者の様々な体調不良が生じている状態が、数多く報告されています。
	これらは症状が多様で、症状発生の仕組みをはじめ、未解明な部分が多く、また様々な複合要因が考えられることから、シックハウス症候群と呼ばれます。
症状
揮発性有機化合物(VOC Volatile Organic Compounds)の種類や濃度、接している時間などのほか、個人の体調や体質によっても異なりますが、一般的には次のような症状が現れます。
目・喉が痛い、頭痛がする、疲れやすく回復が遅い、鼻詰まり、異臭がする、めまいがする、吐き気がする、皮膚に刺激がある
素材と発生するVOCの例
室内環境で発生するVOCは、建材・内装材・ペイントあるいは防虫剤などを含む家庭用品が発生源となっています。
| 発生源 | VOCの種類 | 
|---|---|
| 集成材 | 酢酸エチル、トルエン | 
| 合板 | メタノール、ピネン、リモネン | 
| 木工用接着剤 | 酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、エタノール、イソプロピルアルコール | 
| 金属用接着剤 | キシレン、メタノール | 
| 断熱材 | フェノール、スチレン、ベンゼン | 
| 断熱材用接着剤 | メタノール、酢酸エチル、フタル酸ジブチル | 
| 繊維系断熱材用接着剤 | トルエン、ヘキサン、酢酸エチル | 
| タイル用接着剤 | キシレン、メタノール | 
| 油性ペイント | ヘキサン、キシレン、ジエチルベンゼン | 
| 油性ラッカー | 酢酸エチル、ブタノール、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸ブチル、エチルベンゼン、イソプロピルアルコール | 
| 半硬質及び軟質ビニルタイル | フタル酸ジオクチル、酢酸ビニルモノマー | 
| タタミ | スチレン、ジメチルジサルファイド、カプロンアルデヒド | 
| ビニルクロス | 塩化ビニルモノマー | 
| ビニル樹脂用接着剤 | トルエン、キシレン、酢酸エチル | 
| ワックス | エチルトルエン、トリメチルベンゼン、ウンデカン、デカン | 
| 木材防腐剤 | 1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トルエン、キシレン、ノナン、デカン、ナフタレン | 
| 壁紙 | 酢酸ブチル、ブタノール、トルエン、キシレン | 
| カーペット | ウンデカン、ベンゼン、1,1,1-トリクロロエタン | 
| 石膏ボード | ヘキサナール、シクロヘキサナール、ピネン | 
| 鉱物ウール | イソブタノール、ブタノール、ヘプタン、トルエン、デカン、ウンデカン、エチルベンゼン、スチレン、キシレン | 
| グラスウール | ヘキサン、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、トリメチルベンゼン | 
「住まいのQ&A室内汚染とアレルギー」井上書院(1999年)より抜粋
ホルムアルデヒドの発生源
建材、家庭用品、喫煙、暖房器具の使用等が考えられますが、その中でも発生量が著しく多いのが、尿素-ホルムアルデヒド系の接着剤を使った建材や内装材です。
対策
現代の生活では、化学物質を完全になくすことは困難ですが、室内のVOC濃度をできるだけ少なくすることによって、ある程度防ぐことができます。
1. 住宅新築・改装などの際には、できるだけ化学物質を含まない材料を使用しましょう。
2. 完成から入居までの期間は余裕を持ち、その間できるだけ換気をしてVOCの濃度を下げましょう。 また、入居後も充分な換気を心がけましょう。 特に本道は寒い冬を快適に過ごすため、気密性の高い住居が求められますので、意識して換気を心がける必要があります。
3. ベークアウト(室温を高くしてVOCの放出量を増やした後、強制的に換気する方法)も室内のVOC濃度を低減するのに効果的です。
4. 毎日の生活で使用している家庭用品から放出される化学物質が室内を汚染する場合があります。 防虫剤や消臭剤などの使用は必要最低限にとどめましょう。
法律などの規制
室内には様々なVOCの発生源が存在するため、数百種類のVOCが検出されています。 実態調査の結果、一部の住宅が非常に高い濃度のホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンなどで汚染されていることが分かったため、厚生労働省により次のとおり室内濃度の指針値が示されています。
揮発性有機化合物(VOC)の指針値
| 揮発性有機化合物 | 毒性指標 | 室内濃度指針値 | 
|---|---|---|
| ホルムアルデヒド | ヒト吸入暴露における鼻咽頭粘膜への刺激 | 100μg/m3(0.08ppm) | 
| アセトアルデヒド | ラット経気道暴露における鼻腔嗅覚上皮への影響 | 48μg/m3(0.03ppm) | 
| トルエン | ヒト吸入暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響 | 260μg/m3(0.07ppm) | 
| キシレン | 妊娠ラット吸入暴露における出生児の中枢神経系発達への影響 | 200μg/m3(0.05ppm) | 
| パラジクロロベンゼン | ビーグル犬経口暴露における肝臓及び腎臓等への影響 | 240μg/m3(0.04ppm) | 
| エチルベンゼン | マウス及びラット吸入暴露における肝臓及び腎臓への影響 | 3800μg/m3(0.88ppm) | 
| スチレン | ラット吸入暴露における脳や肝臓への影響 | 220μg/m3(0.05ppm) | 
| クロルピリホス | 母ラット経口暴露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 | 1μg/m3(0.07ppb) 但し、小児の場合は 0.1μg/m3(0.007ppb)  | 
| フタル酸ジ-n-ブチル | 母ラット経口暴露における新生児の生殖器の構造異常等の影響 | 17μg/m3(1.5ppb) | 
| テトラデカン | C8-C16混合物のラット経口暴露における肝臓への影響 | 330μg/m3(0.04ppm) | 
| フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | ラット経口暴露における精巣への病理組識学的影響 | 100μg/m3(6.3ppb) | 
| ダイアジノン | ラット呼吸暴露における血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響 | 0.29μg/m3(0.02ppb) | 
| フェノブカルブ | ラット経口暴露におけるコリンエステラーゼなどへの影響 | 33μg/m3(3.8ppb) | 
| 総揮発性有機化合物 (TVOC)  | 
	国内の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定 | 暫定目標値 400μg/m3  | 
ここに示した値は、現在の科学的知見では、人がその化学物質の示された濃度以下の暴露を一生受けたとしても、健康への有害な影響は受けないであろうとの判断により設定された値です。
	総揮発性有機化合汚物(TVOC)は室内空気質の汚染の目安に設定されたものです。
	毒性学的知見から決められたものではないので、個別の指針値とは独立に取り扱う必要があります。